フル・フロンタルスティーブン・ソダーバーグ
とてもおもしろかった。
劇中劇の設定がどこへも着地していないのが新しかった。
わけわかんないまま、「それ新しいね」と言いたい。みうらじゅんならそう言うね。
これは、最後にはみんなが自分へ帰っていく話だ。
それは死でもいいし、夫婦のとりあえずの和解でもいいし、うそがばれなかったりすることでもいいし、救いの手をはねのける人のトラウマが明るみになることでもいい。死は祝福なんだよ。あんなに恥ずかしい死に方でも。
ショート・カッツに似ていたけど、こちらは個というものがどこかへうっちゃられて、さざ波に翻弄される群像が描かれていた。人は自分の力で人生を切り開いていこうとするけど、精々起こせるのはさざ波程度で、それさえ人の心を動かすには十分だ。なんだかわかんないけど、天変地異で自分の卑小さを知らしめられるよりも、情けは人のためならず、あるいはちょっとした他人の言葉がケチのつき始め、みたいなことがリアルでおもしろかった。
ホテルっておもしろい場所だなと改めて思った。別々に描かれていた群像が、ホテルと小演劇の初舞台にそれぞれ収斂していくのが象徴的でおもしろい。ショートカッツは地震と、奇病の蔓延というSF的装置がそれだった。こちらはサロンとか、別荘地の殺人とかを思い出す。
村上春樹がホテルの精を書いていたけど、こっちのマッサージ師も良かった。