保健衛生にかかわる会議が始まる。
会場を抜けてくる。
どぶ板道を歩く。
むこうからリアカーをひいた老婆が歩いてくる。
白髪まじりのおかっぱ頭で、ふつうのおばあさんとは一線を画すような容貌は、専門的な職業にずっと関わってきたためかと思われる。美人だとか、好意をもてるようなタイプだというんではない。ほんとうにしわしわの老婆。
リアカーには毛布がひいてあって、長い旅程のために予め備えてきたのだとわかる。リアカーには小学生の男の子が乗っている。中腰になって、さっきぼくが抜けてきた会議が、もう始まってしまうと老婆を急かしている。
老婆は子供にわからない事情があるのだと言って相手にしない。
リアカーにもうひとりの老婆が座っている。リアカーをひく老婆と同じ顔をしている。「双子だな」と思う。ふたりは緑と赤で、色違いの同じ服を着分けている。
ふたりの老婆は何ごとか相談している。