煮出した麦茶を熱いまま、冷え冷えのピッチャーに注いでいたら割れた。
パシンと乾いた音がして、きれいに底が抜けるかたちで割れたのだった。
ピッチャーの形をした麦茶が、その形をゆっくりと変えながら、ぼくのズボンに落ちてきた。
直方体の麦茶はぼくの膝頭で砕けた!
リョコウバトの最後の一羽が、撃ち抜かれ落ちてくる幻覚が見えた。
「熱い」とぼくが言うのが聞こえて我に返った。
それで終わりかと思ったら、なにしろ熱いので急いでズボンを脱いだ。
腹がたったのでズボンを投げた。


それにしても、熱くて「熱い」と言うなんて、ぼくも日本人なんだなあ、と思った。